2012年7月12日木曜日

2012年 上半期 ベストディスク! ベスト10


HIP HOPフィールドからもアツい信頼を寄せるSANTIGOLDが2008年のデビュー盤「Santogold」から長いこと待たされた2ndアルバム、「MASTER OF MY MAKE BELIEVE」がようやく登場。アーティスト名をSANTOGOLDからSANTIGOLDに変えたがロックやダブステップ、HIP HOPなどジャンルを縦横無尽に行き来する彼女のスタイルは変わらずヤー・ヤー・ヤーズからニック・ジナー、カレン・O、TV ON THE RADIOからデイヴ・シーテックなどロック勢からのサポートを受け、前作よりスタジアム受けするような楽曲も増えた印象。またレゲエ調の曲やメランコリックな民族調のような楽曲も目立つ。また彼女自身、POP MUSICの芸術性を重んじているようでNMEのインタビューで「今のPOP MUSICの現状には失望している」と語っておりLMFAOやデイビット・ゲッタをこき下ろしている。そのこともありそれらのアーティストの楽曲には似ても似つかない(もともと全く似てないが)アーティスティックなアルバム。M.I.Aに比較されることも多い彼女だが個人的にはM.I.Aなんかよりかなり突出したロックアクトとして見ており1st以降のスランプ(だったらしい)を脱出した決定版。







カンパニーフロウのメンバーであり、90's アンダーグラウンドHIP HOPシーンの最重要プロデューサー/MC、EL-Pの5年ぶりの新作。"奇才"という言葉がなんとも気持ちよく当てはまるアーティスト。90'sに活躍した重鎮MCというのは今の現行シーンについていけず作品が評価されづらく人気が低迷していく人がほとんどの中、(ブレないという言い方もできる)EL-Pに関しては前作からも言えることだが、むしろHIP HOPフィールド以外からも人気を博してしまうという奇才っぷり。アルバム冒頭からProdigy(バンドの)かと耳を疑ってしまう強力なドラムンベースを鳴らして後半までラップしない。下記にYoutubeリンクも貼ったがMr. Muthafuckin eXquire、Danny Brownを客演に迎えた「Oh Hail No」などは最後のヴァースでBPMを落としてDanny Brownキックするというなんともシビレるつくり。また私自身突出したビートに耳を奪われたがラップをすればそれこそ90年代的にいうラップ巧者。HIP HOPファンのみならずROCKファンも魅了すること間違いなしな上半期HIP HOP代表盤。












8. Young L - Enigma Theory



ただVansのことを歌ったVansアンセムで一躍時の人となったTHE PACKからソロでYOUNG Lのフリーダウンロードアルバム。THE PACK時代からすべてのトラック制作を彼がしていたこともあり今回も面白いトラック満載。面白いというかアンビエントなトラックでラップではなく歌っていたり、かと思ったらハードにラップしていたりとやはり範囲は広い様。THE PACKのメンバー Lil' B同様、この全身タトゥーだらけ(でも意外と気弱?)の男の今後の活動はチェックせざるを得ない存在。










前作、「Teen Dream」が高評価すぎて少し怖かったがそんなことは軽く払拭してくれたBeach Houseの4thアルバム。良くも悪くも前作の続編的な印象はあるが、"Dream Pop"の代名詞を欲しいがままにしている。加えて言うと"ドリーミー"な"ポップさ"というのは前作より増しているようにも思う。あとはエフェクトを効かせたボーカルのヴィクトリアの強みも十二分に発揮。まさに"Dream" 夢の中とはこういうことを言う。メランコリックでセンチメンタルなドラマ(夢)をまざまざと魅せられる。全く批判ではないが個人的にはSigur RosやKyteのようなバンドからは受け取れない「感動」がここにはある。







エイベックス所属の5人組女性アイドルグループ、東京女子流の2ndアルバム。ランキングは6位を付けたが個人的に上半期で最も驚いた作品。アルバム全編通してファンクやフュージョンを取り入れたかなり質の高いグルーヴィーポップに仕上がっていたことに腰を抜かした。アルバムタイトル曲、「Limited addiction」のイントロのギターのカッティングにしてもCDを入れ間違えたかと思うほどにアイドルらしからぬかっこよさ。基本的にアイドルに高い歌唱力などはあまり必要ないとも思っていたのだが(あればいいけどなくても問題ない)、このような楽曲でもスマートに歌いこなしてしまう彼女達の歌唱力にも感無量。今の日本の音楽業界が廃れているなんてよく聞くがアイドル業界の盛り上がりを誰も阻止出来ないだけ。この作品を通してもわかるように今最も面白いのはアイドルで間違いない!この評価は決してアイドルを音楽的に過小評価していたからではない。楽曲だけではなく歌唱力(あとダンス)でも魅せてくれるこのアルバムはアイドルというだけで抵抗がある人にも推せる大推薦盤。





Tyler, The Creator率いるOdd Futureから紅一点Syd The KydとMatt Martianによる新プロジェクトThe Internetのデビュー作。生音をベースに置き浮遊感漂うシンセなどで全体的にお洒落R&Bにまとまっている。2分程度の短い曲が多いがそれも含めどれも良曲かつ、夜に部屋を暗くして聴くと最高に気持ちいいアルバム。(別に暗くしなくても良い)だがただのおしゃれR&Bではなく子供的ないたずら心と凶暴さ、ドラッグ、同性愛(シドは自身が同性愛者だとカミングアウトしている)が入り交じった、なんとも黒人的な作品。下記に載せたOfficial Videoはかなり過激なビデオだがそれもOdd Futureらしく、上記で述べたことがすべてサウンドとリンクした映像になっている。"真っ黒"とはこういうことをいうのだろうと彼女達に再認識させられた。(Fastlane → Cocaineのビデオは繋がっている。)ちなみに4曲のBonus EPがこちらでフリーで落とせます。








良質すぎるCity Popアルバム。彼女は前作の「Girlfriend」からしか知らないがかなり風変わりした模様。サウンドに派手さとメロディに幅が広がったように思える。しかし前作もかなり聴いた作品でどちらも甲乙をつけがたいが今作は70's〜80'sのユーミンや山下達郎などのAORを彷彿とさせ、尚且つリードシングルの「DIVE」はイントロからエレクトロニカサウンドを意識したようなサウンドから入り、それが終止控えめに鳴っているのだがそこに乾いたカッティング・ギター、エレピ、などが最高に気持ちいい現代風City Popに仕上がっている。そして何より艶のある彼女の歌声に惚れ惚れしてしまう。なんて恵まれた声と歌のうまさなのだろうか。(加えて恵まれた美貌)聴き終えた後は空虚な多幸感しか残らないのだから国内上半期トップで問題ないだろう。今の時代でアーバンと言えば一十三十一ということになる。







90年代から活躍する異彩を放ったベテランシンガーの7年ぶり4thアルバム。個人的にジンクスとまでは言えないが、人気を高めたアーティストが間を空けてアルバムをリリースすると失敗が多いと思う中、Fiona Appleのこのアルバムはそれの真反対を行ったと言える。サウンド自体はほとんどがピアノ、ヴォーカル、パーカッションで構成されているように非常にシンプルながらもドラムアレンジや卓越したパーカッションに非常に驚いた。ジャズ的要素も含んだパーカッション、そしてなによりささやくように舌足らずな英語で歌っていたかと思えばエモーショナルに感情を剥き出しにするヴォーカル。これは昔からだが彼女の世界に引き込まれる最大の原因かつ、いつの時代も評価され続けられるべき飛び抜けたヴォーカルスタイルだろう。彼女が天才かどうかはわからないが他に形容したり比較出来るアーティストがいない。それほど希有な才能を持ったアーティスト。このCDは6月に買ったばかりだがもうすでに相当な再生回数になっている。私個人だけではなく、一般的にも今年のベストや名盤認定などされるのではないだろうか。







インディロックとアーバンミュージックの歩み寄りが非常に盛んになってきた昨今。それに加え、新たにチルウェイブやウィッチハウスなどというジャンルが出てき、すべての定義を分かっているなど到底言えないが、そこから派生したと思われる、言わばThe Weeknd的なアンビエント・ソウルが個人的に隆盛を極めている。もちろん一般的にも今流行のR&Bとして特筆すべきなのだがそのなかの頂点とも言える作品がこのデトロイトのR&Bシンガー、JMSN(Jameson)のデビューアルバム『†Priscilla†』 である。全体的にストリングスを多用し、ドラマチックでダークな世界観により構成されていて陰鬱な内面、またそこから生まれるエモーショナルで暴力的な一面にも引き込まれて仕方がない。これはロックではないにしろ彼からはカート・コバーン的な非常にロック的で人間味溢れるものを感じた。ネクストThe Weekndなどと謳われるのだろうが、そこがThe Weekndとは決定的に違うところ。(最近はPOPに特化してきた印象があるから)よってどちらがより優れているかという競争意識などは自然になくなるはずだ。上半期と言わず今年のアンビエント・ソウルの決定版になりそう。







Beck MotleyとBon Boyageから成るカナダのMCデュオ、The Airplane Boysの今年の2月にリリースしたフリーダウンロードのMIXTAPEが非の打ちどころがない。本当に素晴らしい。前作のMIXTAPE、『Where've You Been』からThe Weekndを手掛けるトロントのプロデューサー、Illangeloが担当したことで話題だったが、今作はその前作と比較できないほどの作品をリリースしてきた。前作もそうだがロック方面からのサンプリングネタも面白いし、ダークで浮遊感漂うアンビエントな雰囲気を持ったサウンドからダブステップ、4つ打ちまで自身のものに消化出来てしまうクロスオーバーな音楽性、何よりドレイクのようにラップだけではなく甘いヴォーカルで魅せるフック部分は最高で何をどうやっても文句など出てこないはず。まだまだ日本では耳の早いリスナーにしか知られていないようだがアメリカ最大規模のフェス、SXSWやCoachellaにも出演し、観客をロックしているライブも確認できる。ドレイク級に成り得るネクストブレイクアーティストとして今後どのアーティストよりも注目していていいだろう。



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