2012年9月4日火曜日

クロスオーバーするアンビエント・ワールド その4


Radioheadの話で少し出てきたのがこの彼、Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)ことRichard David James(リチャード・D・ジェームス)
90年代に登場してテクノ界に大革新をもたらした超大物である。一般的にテクノというと"踊れるクラブミュージック"を想像すると思うのだが彼の音楽はおおよそそういったイメージとは遠いところにある。何せまず踊れない。冷たく乾いた音像と、時に悪意に満ちあふれた凶暴性を露呈させる音楽性は、ポップな音とは言いがたい。"come to daddy"や"Rubber Johnny"のPVなんて非常に気持ち悪い。常軌を逸しているとしか思えない。加えて人を食ったようなCDのジャケであったり個人で戦車を所有していたりと大変な奇人。加えて、テクノと言っても作曲するジャンルは非常に幅広く、テクノからアンビエント、エレクトロニカドラムンベースアシッドハウスまで多彩にこなす天才。ドリンルンベースなる言葉を作ったのも彼。そんな変態(天才)はなんと1992年に21歳という若さで現在も語り継がれる『Selected Ambient Works 85-92』という名盤でデビューする。(1994年には『Selected Ambient Works Volume II』という続編アルバムもリリースしている。ちなみに、12歳頃から作りためていたトラックを収録しているという逸話もあり。)トム・ヨークはこれから影響されたと言ってよい。名曲『Xtal』に多くのスポットライトが当たるがアルバム全体通してすべての音楽リスナーが聴くべき傑作であり、後世に語り継がれるアンビエント・テクノ大名盤。








このおじいさん誰?って方もいると思うが坂本龍一、高橋幸宏らとの組み、70年代後半に"ライディーン"で一斉を風靡したYMOのリーダー、細野晴臣。元々多作の人で有名かもしれないがエイフェックス・ツインとほぼ同時期にここ日本でも良質なアンビエントなテクノ・ミュージックを作っていたのが彼。当時のアイドルのプロデュースなどにも関わっていたりソロ活動でも多作な人なのだが、YMO解散後は大量消費に頼らない音楽を模索した後、1980年代後期にはワールド・ミュージック、90年代にはこのテクノ不毛時代に淡々とディープなアンビエント・テクノを作り続けた。と言っても私自身、もちろん後追い世代な訳で細野さんのアルバムをすべて持っている訳ではないが、このようなアンビエント・テクノにハマっていた時期もあったので特に90年代のアルバムには思い入れがある。持っている中でアルバム単位でお気に入りというと93年作『Medicine Compilation』と95年作、ゴウ・ホトダ、ビル・ラズウェル、寺田康彦との共作『N.D.E』は特に気に入っている。他にも95年作『NAGA』やHAT名義(Haruomi Hosono, Atom Heart, Tetsu Inoue)の2枚(96年作『Tokyo-Frankfurt-New York』、98年作『DSP Holiday』)などももちろん秀逸な作品だ。











アンビエントR&Bなどの話からエレクトロニカ、テクノの話に流れてきたのだが結果的に言うとアンビエント・ミュージックとは環境音楽のことだ。その3でも"音自体が主役にならずにその場の環境の一部になる"というキーワードがでてきたが、ちゃんとした定義はまちまちなので個人である程度好き勝手に決めても良いと思う。
一般的には音楽のそれ自体に主張があまりないもの、もしくは控えめなもの(例えばリズムがない、もしくは控えめなもの。ヴォーカルなし。など。)であったりする。
実験的な音楽において、「巨匠」と呼ぶにふさわしい地位を築いているのがブライアン・イーノ。「アンビエント・ミュージック」のパイオニアであり、デヴィッド・ボウイ、U2などのアルバムプロデュースや、近年ではデヴィッド・バーンとのコラボーレションアルバムなど様々なアーティストとの盛んな交流も見られるアーティストだ。
何せ1975年には事実上のアンビエント・ミュージックの第一作 Discreet Musicをリリースしている。その後はタイトルにはっきりとAmbientと記載されているAmbient 1: Music for Airportsというアルバムを1978年にリリースしている。(同年にリリースされたMusic for Filmsもしかり)このタイトルは比喩などでは全くなくて本当に空港で流すのに適している音楽ということで実際にニューヨークのラガーディア空港などで使用されているようだ。
環境音楽は大きく分けて音自体を意識しなくてもよい特徴があり、"ながら音楽"には最適である。また逆に自ら意識して音の深みを味わい、アンビエントの深海に潜ることも出来るので個人的には私生活で重宝している。
また、21世紀初となるアンビエント・アルバム『LUX』が今年の11月7日に発売予定であり、世界中のイーノファンには朗報である。
http://www.cdjournal.com/main/news/brian-eno/47351#disc






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